セーラー出版は2013年7月1日をもちまして、社名を「らんか社」に変更しました。

  • 新学期に学校に持っていきたい絵本

    ストライプ

    デヴィッド・シャノン/文と絵
    清水奈緒子/訳

    28×24cm 32P 定価1,650円(本体1,500円)


    ライラはごきげんななめ

    アレクサンダー・スタッドラー/作
    かつらあまね/訳

    25×26cm 33P 定価1,650円(本体1,500円)


    個性のつよい“おふたり”なので、
    第一印象で本を選んでしまうと、
    なかなか選ばれない本なのかもしれません。

    さて、縞模様を書いてみましょう。
    まずは、横に線を描いて
    次に、その線の上に反対色の線を描いて……
    さらに負けない色を並べていきましょう。
    2つの色が交互に並ぶしま模様ではありません。
    トリコロールでもありません。
    ラスタカラーより派手な6色のしま模様。
    この縞模様が、『ストライプ』の表紙の
    主人公の女の子、カミラの顔から身体にかけてと、
    背から裏表紙にかけて広がっています。
    カミラの混乱した心の様子が表れています。

    一方のライラの背景は、白。
    シンプルな線です(インクの使用量も対称的?)。
    “ごきげんななめ”という割に、微笑んでいるライラを見ると、
    無事に気持ちを切り替えたのかな……と、ちょっと安心して
    頁を開くことができそうです。

    まわりにこんな子がいませんか?
    片方はいてみたけれども、靴下が気に入らない。ゴムが選べない。
    選ぶこと自体がつらい。気になりすぎる。
    一度決めたのに、気に入らなくて、くよくよ落ち込んでしまう。
    『ストライプ』の主人公のカミラも
    そんな、どこにでもいる女の子です。

    だれかが無理やり“答え”を選んでしまうと、
    その場では解決するけれども、
    落ち込んでしまった気持ち自体は晴れません。

    自信をもてるときは、簡単に選べるし、
    もし、選択を間違っても、くよくよしない、
    些細なことなのに、
    自分で決められなくなってしまう。
    そんなとき“答え”はもっと別のところにあるようです。

    『ライラはごきげんななめ』は本を開くと、
    予想どおり不機嫌なライラが登場します。
    悪いことが続き、いっそう不機嫌な表情になります。
    落ち込んでしまったのです。
    実は少しはいいこともあったのかもしれません。
    でも、それ以上に怒りが収まらない様子です。

    とうとう、ライラは“バレエを辞めます”と宣言します。
    騒ぐ仲間たちに対して、
    まわりの大人はあまり関心をもってくれないので、
    ますます怒りが収まりません。

    ところが、“最後のバレエ”の時間、集中して身体を動かしているうちに、
    自分のなかで、なにかが変化していくのに気づきます。
    ずっと背景は“白”ですが、ライラの表情は晴れ晴れとしています。

    夏休みを挟んで微妙に変わった人間関係……
    新しい環境、転校、転入、
    習い事でぶつかってしまった壁……
    女子だけではなく、男子にも共感してもらえるようです。

    困っている子どもに、
    声をかける難しさを感じたら、
    この2冊の絵本を、一緒に読んでみてください。

    (読後の感想を聞いたり、まとめたりしないようご注意を……)。
    なだめたり、しかったりするのではなく、
    子どもの心の中に変化が起こるまでを
    一歩下がって見守るヒントがありそうです。

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