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サンタクロース・レッド
サイレント・ナイト
サンディ・ターナー/作
たかはしけいすけ/訳25×25cm 32P 定価1,650円(本体1,500円)
表紙で、大きな袋を抱えたサンタさん。
赤い色の、おなじみの服を着ています。
ひとさし指をたてて、“しーっ”と合図しているので、
静かな夜のお話かと思いきや、にぎやかな絵本です。
表紙には描かれていませんが、
この絵本は、白いちいさな犬が主人公です。
きっと名前はあるはずですが。名前がわからないので、
主人公と呼ばせてもらいます。そして、主人公が語ります。
なので、にぎやかなのです。
原書の英語版では、woof, BARK, yap…
一方の日本語版は、わん、キャン、ばう、わふ……
イヌ語ですね。
音読するとしたら、読む“人”はたいへんです。もうすぐ、クリスマス。
あの人が来る前の胸騒ぎ。
短い手足や尻尾、声の様子が主人公の興奮した状態を表しています。一生懸命伝えようとしても、同居人はといえば……
……ネコは冷静です。
……人間は、まったく気がついてくれません。犬の色覚は、人とずいぶん異なっているようで、
赤い色を認識しにくいと聞いたことがあります。
この絵本は、温かい黄色が地のベース色になっているものの、色数が少ない
(というより、犬以外は着色がありません。
犬が白い色で塗られていたので、白い犬だとわかりましたが、
それ以外はモノクロの世界です)のは、
もしかしたら著者が意識してイヌ目線を表現したものなのかなと思うと、
いっそう楽しくなります。けれども、いよいよ登場した赤い服を着た“あの人”には、
色がついているのです!屋根の上で待機するトナカイにも。主人公(犬)は普段、赤い色を認識しにくいはずなのに、
あの人の衣装の赤い色はとくべつに鮮やかに見えているとしたら……??
サンタクロース・レッド。とくべつな赤。
喜びも倍増しますよね。きっと。
闘牛のように? 興奮するのもわかります。家族には伝わらない切なさ。(読者にはわかっても)
お父さん(人間)には、“あの人”のことは、見えないみたい。
サンタクロース・レッドの魔法の力でしょうか。
家族がほえるのをやめさせようとすればするほど、
イヌトーク?がとまらなくなります。ヒト語版(英語版や日本語版)だけでなく、
イヌ語版があればいいのに。でも、いままで見えなかったものを
見ようとするところに、面白さがあるのだと思います。
人間である自分は、残念ながら持っていない
見えない尻尾をぶんぶん振って、
主人公といっしょに、サンタさんに会えた喜びを一緒に味わいたい気がします。