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てのひらにひろがるお城
おうさまのおしろ
しろませいゆう/文と絵
21×23cm 31P 定価1,650円(本体1,500円)
今年の冬は、雪がたくさん降り、かまくら作りに
夢中になる人が多かったのではないでしょうか。
たいていの人は子どもの頃から、
冬には雪の城、夏には砂の城、
段ボールや積木の城、
お城を作って、そして壊してきました。
大人になっても“自分だけの城”に憧れて、
お城のある遊園地も大好きです。けれども普段から“お城“に親しんで生活している人は少ないと思います。
窓からお城が見えたり、歩いていける距離にお城があったり、
お城の警備や掃除の仕事をしていたりする方はごくわずかです。
ポルトガルに宿泊できるお城があると聞きましたが、
お城に住んでいる人は少ないと思います。
維持も大変そうだし、お城と普段の暮らしとはちょっと距離があります。この本は“お城の生活”が身近に感じられる絵本です。
本の形は、正方形に近い形、折り紙よりひとまわり大きいサイズです。
描かれているのはコンパクトなお城です。
ひらがなのタイトルだったり、可愛らしい王様たちの姿は
一見すると、小さな子どもの本と思われてしまうかもしれませんが、
ぜひ大人に手にとっていただきたい絵本です。本を広げると、横長の画面。
地平線が広がります。
中心にお城があり、キャラクターが並び、
ゲームの画面のようでもあります。おうさまも家来もシンプルな形で、
王冠をのぞいては違いがあまりなく、
まるで、本の題名とよくにた名前の
人気のブロックのシリーズで
遊んでいるかのようです。
(組み立てるのが難しく、大人にも人気があるようですね)そんなシンプルな形だからこそ、
一定の距離を保って、おしろの日々を定点観測するうちに、
親しみがわいてきて、こちらからの距離が近くなっていくようです。季節が変わり、時間が流れ、
喜びもあり、悲しみもあり
音楽がきこえてきて、
風もふいてきて。物語が進むにつれ、そこに描かれていないもの……
堀があったり、井戸があったり、櫓があったり、
海に面している城ならば舟をとめる場所が必要だし、
馬をつないでおく場所もあるだろうな。
そんな様子も見えてきそうです。ヨーロッパの古城のようであり、
アジアのお城のようでもあり、
あのお城のあの時代、あの人々、あの場面を重ねて、
いつの間にか迷い込んでしまいます。
そして歴史が語られていたことに気づかされます。やがて画面に地平線はなくなり
いつの間にか遠くまで行って、そして急にひき戻されたような
時間と空間の遠近感に気づかされ、くらっとします。